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そうだ、忘れてた。
ユージはユキが死んだと思ってるんだった。
俺のことを覚えてもいないユキなんて、俺にとっては死んだも同然だ。そう思って今までの半年生活してきたが。
これまた、神の気まぐれか、運命のイタズラか、再会してしまったわけで。
「そのことなんだけどさ」
俺が改まってユージに視線を向けると、ユージはまるで今から泣きます、という顔をして身構えた。アンハッピーエンドだと分かっていても、そういう映画を観たがる女みたいだ。わりと顔立ちのハッキリしたイケメンの男である点に違和感が拭えないけど。
「別に死に別れたわけじゃないんだ。アイツはまだ生きてる」
「え?」
「生きてるし、最近なんでか再会しちまったわけだけど……でも、あっちは俺のこと綺麗さっぱり忘れてるんだよ。ヒドイだろ」
「なんだそれ?余程嫌な恋愛だったってこと?忘れたフリするほど?」
それならいくらか気分もマシだろう。問題ばかりを起こす、自殺願望のある恋人なんて忘れたいと思って当然だ。ユキがそんな俺に嫌気がさして別れたのなら……いや、それでもやっぱり俺はまたどこかの高いところから地上を目指して飛んだに違いないか。
今こうして俺が生きているのは、いつかユキが記憶を取り戻して、俺を迎えにきてくれるからと期待しているに他ならない。
嫌いになって離れたわけじゃないんだから。
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