二度あることは三度ある

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「ここに来る前、俺とソイツは色々あって事故ったんだよ」 「事故った?」 「ん。本当にくだらない、それこそアイツは俺の恋人ってだけで巻き込まれただけなんだが、俺がちょっとしたミスで真冬の氷のような河に落ちてな」 「鈍臭いもんな、修哉」 「うるせぇ!…まあ、そんで助けようとしたソイツも一緒に流されてさ。気が付いたら病院のベッドの上で、岩やらで頭打ったソイツは俺のことすっかり忘れてたってことだ」  なんて滑稽な話だ。もし自分の身に起きたことでなければ、俺は腹を抱えて笑っていた。そんなクソみたいなドラマ誰が見るんだよ、と。使い古されたネタだ、と。  実際、俺は笑おうとした。正気じゃなかったんだと思う。  でも笑おうとする俺を、ユキの母親のアヤちゃんも、アニキも、叔父さんも、加藤も、その他の人たちみんな悲しい顔で見つめてきた。  俺があの古くて汚いアパートを捨ててきたのは、ユキが俺を忘れてしまったことよりも、哀れな目で俺を見る周りの人間から逃げたかったからというのが本当のところだ。  可哀想なんて言葉、今まで散々言われてきたけれど、今回ばかりは耐えられないと思った。  俺はふうとひとつ溜息をこぼし、笑みを浮かべた。 「そういうわけだからさ、もう終わったんだよ」 「終わったっていう顔してないけどなぁ」 「っ、それは……」 「再会したんだろ?それって凄いことじゃね?お互い行き先も、今何してんのかも知らないで偶然?それを世間じゃなんていうか知ってるか?」
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