二度あることは三度ある

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 アハハと笑うユキは、言葉とは裏腹に拳を振り上げようとしていた。 「ま、待て待て待て待て!!わかったよ、付き合うからすぐに殴ろうとするな!!」  以前、断り続けてタコ殴りにされ、気絶している間にユキの部屋に移動していたことがあった。意識のない俺を、果たしてどうやって運んだのかはあまり考えたくない。  ともかく強引で強情で、人の話を聞かないところはそのままなのだ。  さっきユージとの会話で、運命だなんだと言われたことが頭をよぎった。こんなヤツが運命だなんてマジで勘弁してほしい。 「よし、じゃあさっそく移動しようぜ。コンビニでお菓子とジュースでも買うか」 「好きにしてくれ……」  俺は仕方なく眠い目を擦り擦り、ユキについて歩き出した。  ユキは何がそんなに楽しいのか、他愛もないことをペラペラと話し続ける。  付き合っていた頃はそんなことはなかった。特に話をするでもなく、ただ手を握って歩いたりした。握りしめた手のヒンヤリした感触が記憶にまだ残っているけれど、千隼との関係が続くにつれて薄れているような気もする。  こうやって、過去の恋は忘れて行くのか。  だからなんだって話だけど、少し寂しい……気もしないでもない。  とにかく俺はユキとやり直そうなんて夢を見ることはやめた。千隼に言われた通り、適度な距離感を持って接すればいつか友達になれるだろうと思い始めていた。  途中のコンビニで水とタバコを買った。ユキは楽しそうにスナック菓子なんかも買っていた。買い物カゴにいっぱいのそれを、俺に押し付けてくるところなんて以前から変わっていない。
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