P.S.

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P.S.

「オハヨウ、オハヨウ」  今日も定時の目覚ましが鳴く。クローゼットはいつも通りきっちり閉まっている。 「おはよう、ペペ。ソファで寝ちゃってたみたい。シャワー浴びなきゃ」 「ピンポーン」  女は驚いた様子であった。早朝の来訪者など、誰しも予期しない。 「お届け物です」  ドアスコープから外をのぞいた女は少し狼狽えた。誰もが知っている有名な宅配業者の制服を着ているにも関わらず、どこか恐ろしい、変ににやけている男が立っていた。覚えは無いが、半分好奇心、半分恐怖心ながら、害のある物ではなさそうに見えたのと、受取人が間違えなく自分自身だったので、女は自然に対応した。今日は休日であるからだろうか、それとも、差出人が不明であるのに物凄い筆圧で書かれているからだろうか、女は寝間着姿のまま、受け取ったラブレターを、まどろむ世界の中であやふやに読み始めた。女は律儀に全文を読むと、叫ぶでもなく、逃げるでもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。  静まり返った部屋の中で、インコが急に喋り始めた。 「……マエ……イル」 「……マエズットイル」 「……マエズットミテイル」 「オマエヲズットミテイル」
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