1章 盲目の彼女

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 そう応える庸介の目元がやわらかい。彼はマメには特別やさしい。マメと彼は去年ボランティアで出会ってから、よく一緒に出掛けるようになったそうだ。ただの友人だとマメは言うけれど、彼はマメが好きなのではないかと恵梨は勘ぐっている。地味な子が好きな男とは以外にいるものなのだ。  庸介と会うときにはいつも彼の好物である和菓子をせっせと作って持っていくあたり、マメもまんざらではなさそうだ。何より、超がつくほど出不精のマメが、庸介が一緒だとふしぎに外出の誘いにも頷くのだ。最近はよく二人で映画館に行くらしい。庸介が映画の内容を教えてくれるから楽しいとマメは言っていた。 「マメ、そろそろサングラス外したら。屋内だし、いらないんじゃない」 「ああ、そうだね」  恵梨の言葉にマメは素直に頷き、その小さな顔に不釣り合いな大きなサングラスを外した。携えていた白杖も、たたんでていねいにリュックにしまう。  マメは幼いときの怪我が原因で目がほとんど見えないらしい。この春までは市内の盲学校で学んだが、進路が見つけられず、いまは家で料理や掃除なんかの家事をして過ごしている。 
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