1章 盲目の彼女

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 といっても、マメも世間話のうまい方ではないので、こうして黙るよりほかない。遠山がどういう人間なのかさっぱりわからないが、きっと沈黙に耐えられる人なのかもしれない。ならばそれに甘えるのがいいかもしれないとマメは思った。  大体、おしゃべりしようと思っても、人に話すことなど、マメには特にないのだ。  そんなわけで案内所の中はしばらく沈黙が続いた。しかし、恵梨がいなくなって十分ほどしたころ、マメの携帯電話がけたたましい声を上げた。 『サトウヨウスケ、サンカラ、デンワ、デス』  マメの携帯電話は着信すると相手の名前を読み上げてくれるのだ。リュックから携帯電話を取り出し、通話ボタンを押す。この端末はおもに年配者のために開発されたものなので操作は簡単だ。ボタンの位置を覚えてしまえば、マメにも通話くらいならできる。 「もしもし、マメちゃん? お昼ごはん、何がいい?」  庸介は色々なものがありすぎて選べないのだという。決断力のある庸介にしてはめずらしいとマメは思った。 『遠山、近くにいるでしょ?奴にも聞いてくれる?』  そう庸介が言うので、マメはおずおずと、 「あの……遠山さん」
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