1章 盲目の彼女

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「何」  素っ気ない上に、ちょっと冷たいものの言い方だ。マメは少し萎縮してしまった。 「よ、庸介さんがおひるごはんはなにがいいかって……」 「別になんでもいい」  遠山は「そんなことでいちいち電話してくんな!」とでも言いたげな感じだった。 「……。庸介さん、遠山さんは何でもいいそうです。……え? あ、はい……。あの、遠山さん」 「何」 「何でもいい、の何でもとは具体的に何か、と庸介さんが……」  遠山の舌打ちが聞こえた。 「ちょっと電話かして」 「どうぞ……」マメは両手で携帯電話を差し出した。 「……おい、佐藤。何なんだ、さっきから。別に何でもかまわないと言っているだろう。……はあ? ……なら米だ、米。なんでもいいから早く帰ってこい。……ああ、わかった。わかったよ」  遠山はそういうと、おもむろに、 「きみはなにがいい」  と、マメへ尋ねてきた。 「米かパンかめん。どれがいい」 「じゃあ、お米で……」 「佐藤、米だ。二人とも米! ……行列ができてる?別になんでもいいから。……ああ。牛丼でもタコライスでもいいよ! じゃあな!」
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