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遠山は乱暴に言ってから、電話を切った。マメの手に携帯電話を押しつける。軽く触れた指先が、真冬に外へ出たときのようにひやりと冷たかった。
「庸介さん、どうしてわたしに電話をかけてきたんでしょうか?」
「僕が携帯電話を持っていないからだろう」
「えっ」
「なんだ、『えっ』って」
「いえ、めずらしいなと思って……」
「嫌だろう。電話を持ち歩いて、いつでも誰とでも連絡がとれる状態でいるなんて」
「それが携帯の便利なところだと思いますけど……。それに、お友達と連絡を取りたいときに困りませんか?」
「困らない。そこまでして連絡を取り合いたい奴なんていない」
「……」
マメは返す言葉がなかった。言葉を返す気力も、遠山のにべもない返答によってそぎ取られてしまった。
部屋の中はまたしばらく沈黙が続いたが――
「……佐藤とは、どこで知り合ったんだ」
ふいに遠山がぽつりと言った。
「え……わたしがですか?」
「この部屋にはきみと僕しかいない」
「あ、すみません。ええと……去年、市立図書館で知り合いました。庸介さんが朗読ボランティアをしていたので」
「朗読?」
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