1章 盲目の彼女

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「はい。わたし、実は視覚に障害があるんですが……」 「それは知っているからいい」 「あ、はい……」  なんだ、気づいていたんだ。マメは思った。マメの視力のことを知ると、大抵の人はやさしく接してくれるか、腫れ物のように扱うかのどちらかだ。遠山のように素っ気のない……というかあからさまに冷たい態度を取る人はめずらしいので、もしかしたら気づかれていないのかもしれないと思っていた。 「目が見えないと、やっぱり読みたい本を自由に読めなかったりするんです。すべての本が点字に訳されているわけではないですし。でも、図書館にお願いすると朗読ボランティアの方が代わりに読んでくれるんです。そのサービスの存在を知って、はじめてお願いしたボランティアが庸介さんでした。話しているうちに、わたしと庸介さんはすきな小説の好みが合っているっていうことがわかって……わたしが読みたい、読んでほしいっていう本を、庸介さんはぜんぶ持っていたんです。そんなことがあって、意気投合したというか。図書館を介さずに会うようになって、最近はいっしょに映画に行くようになりました」 「映画? 佐藤と?」
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