1章 盲目の彼女

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 マメはウサギが好きだ。動物の中で一番好きというより、ウサギという動物の存在自体がいとおしいと思っている。ふれあい動物園を訪ねたのも、獣医学部で生まれたばかりのウサギを飼育しているという情報を恵梨から得ていたので、もしかすると仔ウサギが抱けるかもしれないという下心あってのことだ。  仔ウサギは抵抗力が弱いし、ストレスになるからふれあいはせず展示のみの予定だったらしいが、マメが無類のウサギ好きだということを話すと、鶫が特別にふれあいの時間をつくってくれた。  時間にすると十五分くらいだっただろうか。他の来場者には見えないよう奥の部屋で、腕に生まれたばかりのネザーランドドワーフを抱かせてもらえた。研一や鶫と話もしたが、ウサギの生態だとかマジメな話はほんの少しで、ほとんどが個人的なおしゃべりになってしまった。  けれど、まさかこの二人も庸介と親しかったとは、マメは思いもしなかったのだ。 「さっきは、わたしだけ特別扱いしてもらって、なんだかごめんなさい」 「いいよ、そんなこと」鶇が笑う。年齢はおそらく二十歳くらいか。鶫のゆったりとしたものの言い方が、マメは聞いていて心地がよかった。
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