1章 盲目の彼女

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「マメちゃんのお友だち、恵梨ちゃんだっけ? 必死だったよ。『展示じゃ意味ないんです!』『今日はそのために来たんです!』って。これは断れないと思って、わたしから研ちゃんにおねがいしたの。それにね、実は、最初から準備はしてあったんだ」 「え?」 「何日か前に、ウサギには触れるんですかっていう問合せの電話があったらしいの。いちおう展示のみっていう説明はしたんだけど、家族に目の見えない人がいるからどうしても触らせてあげてほしいってことだったから、その人がきたときのために、部屋を用意しておいたの」 「へー。マメちゃんのご家族かな」 「いえ……」 「違うと思う。山田さんっていう方らしいから。午前中にくるって言ってたんだけど、結局来なかったみたい」 「そうなのか?」 「この大学は広いから、農学部まで辿りつけなかったのかもしれませんね、山田さん」マメは言った。 「農学部じゃなくて、獣医学部だけどね」 「え。そうなんですか」
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