1章 盲目の彼女

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「よく間違えられるんだ。他の大学じゃ『農学部獣医学科』っていう感じで農学部の中に含まれてたりするところもあるんだけど、ここでは獣医『学部』っていう、農学部とはまた別の、独立した学部なんだよ」 「そうなんですね。じゃあ……研一さんと鶇さんはもしかして、獣医さんのたまごなんですか」 「研ちゃ……四谷くんはそうだよ。わたしはアハトなの」鶫は言った。 「アハト?」 「アニマルヘルステクニシャンの略。かんたんに言うと、動物の看護士ってところかな。診察の手伝いとか、検査したりとかするの。動物系の専門学校を出て、今年、この大学の動物病院に就職したんだ」  研一も講義のないときはたいてい動物病院にいて、教授が診察するのを手伝っているそうだ。将来臨床医になったときのための現場実習らしい。 「ツグミは俺とほとんど同い年だけど、診察室では仕事仲間だし、先に現場に出た先輩でもあるな」  研一が言った。「ツグミ」という親しげな呼び方から思うに、二人は単なる仕事仲間以上の関係でもあるのかもしれない。
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