1章 盲目の彼女

20/27
前へ
/144ページ
次へ
「まあね。今日は人手が足りてないからって、たまたまふれあい動物園に駆り出されたんだけど、本当はわたし、学生じゃないの」 「そうなんですね。アハトか……かっこいいなあ」 「ふふ。マメちゃんて、さっきはすごくシャイな感じがしたけど、思ったより話しやすいね」 「わたしがシャイですか?」マメはきょとんとした。 「うん。だって恵梨ちゃんと一緒のとき、一言もわたしと口きいてくれなかったもん」 「あ……ごめんなさい。恵梨ちゃんはしっかりしているけど、わたしは何でも遅くて。何か話しかけられると、わたしが考えているあいだに、恵梨ちゃんがぱっと答えちゃうんです」 「ふふ。そうなんだ。お姉ちゃんみたいだね、その恵梨ちゃんって」 「恵梨ちゃんとはじめて会ったのは、おととしの冬のはじめくらいなんですけど。わたし、駅で切符を買おうと思ったんです。そしたら、手伝いましょうかって、言ってくれた人がいて……」 「それが恵梨ちゃん?」
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加