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彼……浅沼裕貴は、建物の出入り口わきにある花壇で、仰向けに横たわった状態でこと切れていた。状態からみると、どうやら転落死のようだ。
見上げると、三階の窓がひとつ開いていた。
「あの窓から転落したのか……」
浅沼のそばには彼のものらしい携帯電話が落ちていた。転落の衝撃で、すっかり壊れてしまっている。
不幸中のさいわいというべきか、プランターに背中を打ちつけたようにして亡くなっていたために、顔を含む頭部の損傷はそれほど激しくなかった。だから、遠山もすぐに自分の知り合いだと気づいたのだろう。
「遠山君はこの浅沼君と友だちなのかな? ご家族の連絡先とかは知ってる?」
「知りません。友だちじゃないので」
「あ、そう……」
知人の死に遭遇したというのに、うろたえている様子はいっさい見受けられない。よく言えば冷静、悪く言えば感情が見えない、何を考えているかわからない印象だ。最近の若い子ってこうなのかな……と二十六歳の相澤は思った。
「仕方がない。相澤、学生課に連絡して遺族に連絡するように言え」
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