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 博士と助手は新種と思われる節足動物を詳細に調べた。1時間もたっただろうか、押したり引っぱったりするたびにワサワサと動いていた(あし)が、徐々に反応しなくなってきた。 「博士?これ、だんだん弱ってきてるみたいですけど」 「やはりな・・・」 「どうしてですか?」 「呼吸だ」 「呼吸?」 「石炭紀には規格外の大型昆虫が陸上に棲息していた。いわゆる巨大化(ギガンティズム)だ。高さ30mにも及ぶリンボクが繁栄しバンバン光合成したおかげで、酸素濃度は35%(現在は21%)にも達した。肺を持たない節足動物が巨大化できたのは、高酸素濃度の環境があったからだ」 「つまり、こいつが生きていくには、現代の大気の酸素は薄すぎると?」 「そのようだな。だから残念ながら、これは新種ではなく突然変異の一個体にすぎない」
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