20人が本棚に入れています
本棚に追加
博士と助手は新種と思われる節足動物を詳細に調べた。1時間もたっただろうか、押したり引っぱったりするたびにワサワサと動いていた肢が、徐々に反応しなくなってきた。
「博士?これ、だんだん弱ってきてるみたいですけど」
「やはりな・・・」
「どうしてですか?」
「呼吸だ」
「呼吸?」
「石炭紀には規格外の大型昆虫が陸上に棲息していた。いわゆる巨大化だ。高さ30mにも及ぶリンボクが繁栄しバンバン光合成したおかげで、酸素濃度は35%(現在は21%)にも達した。肺を持たない節足動物が巨大化できたのは、高酸素濃度の環境があったからだ」
「つまり、こいつが生きていくには、現代の大気の酸素は薄すぎると?」
「そのようだな。だから残念ながら、これは新種ではなく突然変異の一個体にすぎない」
最初のコメントを投稿しよう!