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 しばらくすると、白衣を着た博士が、イケメンの助手を連れてやって来た。助手の流し目に母と娘は頬を赤く染めた。  博士はグレゴールの部屋に入ると、開口一番こう言った。 「Armadillidiidaeですかな?」 「それは?」と、巡査。 「ダンゴムシです」 「そうだと思いました」 (Armaは武器・(よろい)のこと、アルマジロも同じ語源) 「深海に生息するダイオウグソクムシ(具足(ぐそく)とは侍の甲冑のこと)とも外見は似ているが、あれは大きめのフナムシに過ぎん。とにかく、これほどの大きさの陸棲の節足動物など知られておらん!これは、新種に違いない!」  次第にテンションの上がる博士を見て、母はにっこり微笑んだ。 「そうでしょう?貴重な標本ですよね?持ってっちゃってくださいます?」 「ええ。飼育して生態を研究したのち、最終的にはして標本保存いたします」  という言葉に、肢がいっせいにワサワサ動いた。 「あはは、虫さん、焦ってるよ」と、妹。
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