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「じゃあ早速進めていきたいと思います!ええっと、あなたのお名前は田部村さんでお間違いないでしょうか?」
「はい、そうです」
「あ、良かった!たまにオードリー・ヘップバーンとか、ジョニー・デップとか、往年の名優の名前をおっしゃる方もいらっしゃるので…毎回どう対応しようか悩むんですよ〜」
「……はあ、そうですか」
「そうなんです。それでこのノスタルジッククッキングは、ゲストさんが食べたい料理を私達の時代でも作ってみよう、というコーナーです。こちらで色々献立の資料は用意しているのですが、田部村さん、何か今食べたいもの、ありますか?」
目をぱちくりさせ、おばさんが聞いて来る。田部村は困った。いきなり夢で何を食いたいかたずねられても、そうそう出て来ない。いっそヌンチャクリン炒めヴェロガース風とか言ってみようかとも考えたが、彼はそんな勇気を持ち合わせてなどいない。
「じゃあ、豚汁で」
予定調和的な答えに落ちつく。きっとこの番組で何百回も作っているだろう。
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