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会場がどっと笑いに包まれる。一回も未来に召喚された事が無いからこんな身勝手な反応が出来るのだろう。例え田部村の時代になんちゃら原人や、なんちゃらデルタール人が召喚されたとしても、田部村は決して彼らを嘲笑しないと心に誓った。おばさんは画面を出したり引っ込めたりを繰り返しながら、豚汁のレシピを探している。
「あ、これですね。ありました。ふむふむ、へえ、美味しそうですね」
ふぅ〜ん、と数人の観客が感心したとでも言いたげな声を上げる。どこまで過去の人間を馬鹿にすれば気が済むのだろう。昔の人間が食っていた物は不味いと思い込んだ結果がこのざまだ。田部村は、なんちゃらマニョン人が飯を作ってくれたら、文句を言わずに美味い美味いと舌鼓を打ちながら完食してやろうと思った。自分の部屋に招いて、我々人類の精神的な進歩の無さを肴に酒でも飲み交わしたい心持ちさえした。どうせこの未来人達は三時のおやつに、赤子が母の乳を吸うように、絵の具のチューブみたいなものから出て来るよく分からない液体を、チューチュー口を尖らせて啜っているに違いない。そんな無様な奴らに笑い者にされるのはひどく心外である。
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