知らぬ間に未来のお料理番組にゲスト出演して、T汁を作る羽目になった男の話

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「じゃあ早速、根菜類の皮をむいてから切っていきましょう。それから長ネギ、しいたけ、豚バラも切っちゃいましょう。田部村さん、少し手伝ってもらっていいですか?この人参を一口大に切ってもらえると助かります」 「はい」 渡された皮むきでスルスルと人参の皮をむき、ステンレス製の包丁で切る。よく研いであって、少し摩擦の力を加えるだけで切れる。気持ちがいい。隣を見るとおばさんは慣れた手つきで皮をむき、手際よく切っている。ゴボウはもう水にさらしてある。この番組を長い事やっているのか、動きに無駄が無い。 「じゃあ早速炒めましょう。ちなみにこの油は田沼さんのです」 浮いた画面に油の入ったボトルを通してからおばさんが言った。詳しい産地や作った人の顔写真がのっている野菜がよくあるが、油までとはなかなか珍しい。流石は未来だ。同じように他の野菜も次々スキャンしていく。 「人参が宮崎さん、ゴボウが田村さん、里芋がジャンさんのです」 「へえ、外国の方もいらっしゃるんですね」 「はい、グローバル化が進んでおりますし、地球を一つの星と考えれば些細な事ですよ。様々な生き物が住み、生きているのだから普通です」 「なるほど」
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