エブリスタねこ

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 もうすぐ日付が変わる23時の受付フロアに、ビル階下のセ○ンイレ○ンで買った麻婆丼の匂いが充満している。本日2回目の食事を終わらせ、やっと事務仕事に入る。別腹とばかりに、いちごチョコに手を伸ばした時、 「いや、ちがう! そうじゃなくて!」  思わず机でのたうち回った。なお、私以外いないから安心して欲しい。  生徒も先生も帰り、アルバイトは定時に帰らせた。誰もいないのをいいことに、教室の机を全部なぎ倒してやろうか、ホワイトボードに落書きしまくってやろうか、赤本全部燃やそうかと思うけれど、心がチキンなので脳内だけで補完する。 「仕事が、しごとが終わらなーーーーい!」  フロアどころか、職場のあるビルはここ以外、全テナントとっくに皆帰っているだろう。今夜も警備施錠は私の仕事だ。一人、がらがらと手動でシャッターを下ろすあの侘しさよ。  深夜のビル内で叫んだ。 「あああ、仕事しないでエブリスタ読みたーーい!」 「エブリスタを、ご希望ですか?」 「ひっ!」  無人だと思っていた真っ暗な共有廊下から、声がした。  受付前のドアに、それは居た。  ねこだ。
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