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これを機に諦めて貰おうと気を振るって玄関を開けたものの、見事にそのカモになってしまったことは重々自覚しているし反省もしている。
けれど、相手も人間だと思うとそう邪険にもできない。相手の身になって物事を考えてしまうのもそうだし、単純に自己主張をできないのもそう。
何より、社会で働くことの厳しさを知ってしまったから、余計にだ。
「あ、そうだ……この前契約した生協、退会しようと思ってたのに忘れてた」
2週間前に、これも同じく玄関先で契約した生協――自炊するのに初回お得なセットをお届けとの謳い文句で入会した――。
これは確かに便利なのだが、普通に仕事帰りにスーパーに寄れるし、あまり必要性を感じなかった。
そりゃ、大きい物を買って運んで帰るのをしなくていいのは魅力的だったけれど。そもそも私の場合、注文書をチェックするとかそういったマメなことはできそうにない。
それにあまり銀行引き落としの数を増やしたくない(お給料が著しく減っているように見えてくるから)。だから、なんとしても退会手続きを踏まなくては。
そう私は身を奮い立たせ室内へと戻った。
これからも、こうして断れないがゆえに私は契約をし続けるのだろうか。そう思うと、ぞっとする。
こういうとき、いつも家の守り神のように鎮座していた強気な母を思い出す。
ああ、ここに母がいればいいのに。
こんなときだけ都合よく思う。いっそ妹でもいい。ズバッと言いたいことを言える強さを持った誰かがいてくれたら。
そうは思うけれど、でもそれはそれでどうなんだろう……。ようやくひとりになれてほっとしているのに、誰かと一緒に住むなんて今は考えられない。
そこまで考えて、わたしはやっぱりこれはどうにかして付き合っていかなければならない問題なのだな、とひとり飲み込んだ。
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