第一章 秒針のダイナマイト

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第一章 秒針のダイナマイト

 駅から続くショッピングセンターを抜けると、KUROHUNEという建物に入る。その建物は、オフィス、美術館、レストランなどがある複合施設になっていた。  更にKUROHUNEには、中にもう一つの建物があり、文化財の銀行を包むように出来ていた。  そして、文化財の銀行を見降ろすように、喫茶店金太楼があり、俺、遊佐 八起(ゆさ やおき)が働いている。  金太楼は昼しか営業していなかったのだが、最近、夜の営業を始めた。そこで、店長の雪谷(ゆきや)が、文化財をライトアップしてくれるようになった。  しかし、ライトアップだけならば良かったのだが、評判が良かった事に喜んだ雪谷は、更に3Dプロジェクションマッピングなども開始してしまった。  すると、やや観光地化してしまい、通勤、通学以外の人も、開催時間に合わせてやって来るようになった。 「……八起、回りは混雑してきたのに、金太楼はいつも通りなのか?」  金太楼は美術館の斜め前にあり、通路に椅子が用意されていた。銀行を見降ろす、ガラス張りの通路には人が大勢いるが、金太楼の店内はいつも通りに、まばらに席が埋まっているだけだった。しかも、美術館が経営する軽食と喫茶の店、虹色が夜の営業を始めたので、むしろ客が少なくなったような気もする。 「……いつもよりも、客が少ない……」  金太楼の店内には、空いている席もあるが、虹色は満席どころか、人が列になって並んでいた。 「……まあ、八起だからな……カップルでも女性は嫌がる。ここは、男のオアシスだからな」  カウンターに座っているのは、高校生の三つ子、奥州谷三兄弟、斗真(とうま)、恵吾(けいご)、進務(すすむ)であった。この三兄弟は、黒船と契約し、金太楼のカウンターを借りている。
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