第三十七章 笑顔は箱の中 二

4/10
前へ
/465ページ
次へ
 道路から離れているのに、どうやってバイクがやってきたのだろうか。  そのバイクが俺から箱を奪おうとしたので、俺は目を開くと、相手を見た。 「君は誰だ?」 「あ、眠っていなかったのか…………俺は、八起の兄だよ。失敗作だけどね」  俺に兄がいたとは知らなかった。しかも、その男には、背にも手が付いていた。前の二本の手でバイクを運転し、後ろの二本の手には、刀と銃を持っていた。 「俺を殺しに来たの?」 「…………どうして、殺すの?兄だと言ったよね??????俺は八起の兄だよ!!!!!兄ちゃん、分かる?」  やっと、獅子神事件の全容が分かってきたのに、ここで、又、厄介事を考えたくない。兄だという言葉は、忘れておこう。 「八起の事をやっと見つけた。それなのに、近付いてはいけないと言われた…………でも、八起が目覚めたら、会ってもいいって」 「誰に言われたの?」  男は口の端で笑うと、俺に向かって銃を構えていた。 「素直に眠っていなかった事といい…………攫うのは苦労するかな…………八起。俺は失敗作でさ、感情がコントロールできない」  そこが失敗なのか。後ろの多い二本の手が、失敗なのかと思っていた。それに、この男からはアユミの匂いがするが、地球人の匂いがしてない。 「兄弟は血の繋がりではなく、何?」 「…………運命の繋がりだよ」  これは、とてもヤバイ人のような感じがしてきた。 「アユミには、まだ何かあるのか…………」 「この界の理があるのさ…………」
/465ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加