第三十七章 笑顔は箱の中 二

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 ここは、逃げておいた方が良さそうだ。だが、この箱を渡すつもりはない。 「ジャッジ!」  駿河がジャッジを呼び出すと、俺に憑いていたハヤト、ミヤビも姿を出した。 「…………この界の理に反しているのは、こいつらだよな…………殺してもいいか?うんいいよ」  一人で会話をすると、男は刀を振り降ろしていた。 「八起はな…………ずっと、ずっと、何回も何回も失敗して…………失敗して…………」  何かの実験で俺は産まれたのだろうか。 「やっと生まれた純血種の雄だ。だが、完璧過ぎて、俺達には扱えなかった。そして、持ち去られてしまった…………」  どうも、完璧な純血種の雄は産まれても、すぐに死んでしまい、生き抜く力が無かったようだ。そして、俺は死んだとされて持ち去られ、その存在を消されていた。 「生きていた…………生きていた…………ずっと、欲しかった。触れて、抱き締めたかった……俺は兄だよ…………」  取り敢えず、この男が俺の事を何か知っているとわかったが、まともに話ができそうにない。 「ジャッジ、記憶をコピーしておいて」 「まあ、やっておきますが。あちらの記憶から、八起の事を消しておきましょう」  ジャッジは、嫌そうに歩くと姿を消した。そして、バイクの男も姿が消え、割れた窓だけが残った。 「何が起こった?」 「まだ残っている中間層に、男とバイクを送った」
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