第三十七章 笑顔は箱の中 二

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 本尾は、黒船まで俺達を送ってくれた。俺には、金太楼のバイトもあるので、これからまだ働かなくてはいけない。  車から降り、本尾を見送ると、ジャッジも横に立って見送っていた。 「ジャッジ、何か分かった?」 「いいえ。新しい情報という感じではありませんよ」、  男は洗脳されていて、俺の兄という記憶を埋め込まれていただけであった。そこで、ジャッジが元の記憶を読もうとしたが、支離滅裂で何も分からなかった。 「アユミは壊れ初めていて、まともな人間を生み出せなくなっている」  宇宙人が人間に擬態できなくなっていて、その理由は、地球人の激減にあった。そこで、本来の宇宙人に戻ろうとしたところ、地球に排除されそうになった。そこまでは、ジャッジにも理解できるという。 「悪魔に宇宙人、どこまで変になってゆくのだろう」 「全くですね」  ジャッジに言われたくないが、ジャッジの界でも似たような事が起こっているという。 「私達は死を排除し…………永遠を得た。だがそれが終焉だとは気付けなかった…………」  そして、死ぬために他の界に移る流出者のせいで、全てに歪みが生じ始めた。 「世界は、同時に滅びるのかもしれません。でも、まだ私は、足掻いていたい」  まだ諦めるには早いと、ジャッジは溜息をついていた。 「そうですね」  それには、まず、ルールを犯した悪魔を罰しないといけないらしい。 「ジャッジ、探し人は黒船に頼んでください。俺と駿河が探します」 「そうしましょうかね」  だが、人ではないものは探したくない。
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