クリスマス・イブにサヨナラ

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数日前、最後の登校を済ませ、高校を後にした 23日のうちに家の中は空にした 必要な物だけ詰めてダンボールでアメリカに送り 後は売った 泊まりで岩場にクライミングに行く時の1人用のテントは売ってしまったけれど、ずっと使っていた寝袋だけを残して23日はなんにもない部屋の中で眠った 先週まではここにテーブルがあって、陸君と笑いながら鍋をつついてた 鍋をつつきながら私たちは沢山健人君の話をした 陸君はおっちょこちょいな健人君の話を笑いながらした後 愛しそうに遠くを見た その後、この床に布団を敷いてセックスをした この3ヶ月、週末はだいたいそんな過ごし方をした でも明日でおしまい わたしも、あなたも 次のステップへ進まなければいけないのだから 翌日24日の朝、大家さんが来て部屋の受け渡しをすることになっていたから窓際に体育座りをして外を眺めていると携帯が鳴った ──もしもし ───────楓さん、おれ ──おはよ ──────今日何時くらいになりそう? ──ジムのバイトこれからだから、17時くらいには行けると思う ───────じゃあ駅前のツリーの下で ──うん、じゃあまた後で ピッ 私は電話の通話終了ボタンを押して、また外を眺めた バイトは先週で辞めた 陸君は明日の朝、わたしが旅立つことを知らない 毎年、この時期に飾られている駅前のクリスマスツリーは大きくてキラキラしていて 恋人たちの待ち合わせ場所に人気だった 毎年当たり前のように通り過ぎていたキラキラしたツリーの下で、私は初めて男の人を待った こんなキラキラした世界に不釣り合いな 真っ黒なシンプルなコートに真っ黒なパンツ姿で 隣で待ち合わせをしていた女の子は 白いコートにピンクのマフラーをしていて、 彼氏が迎えに来ると真っ白な頬はピンクに染まった ──楓さん 彼が少し離れた場所で私に手を上げて、私の名前を呼んだ 周りにいた女性が彼を見つけて色めき立つ そう、彼は魅力的な人 今日だけは私とデートしてくれる人 陸君が予約してくれたイタリアンでおなかいっぱい食べた いつもはなんにもない部屋で鍋をつつきながら健人君の話ばかりしていたけれど 今日は私の夢の話と陸君の夢の話をたくさんした そんな間もカウントダウンは始まっていた ──すごいね、ラブホテルなんて初めて入った! ─────俺もですよ ──なんか照明が変えられるみたい 大きい柔らかいベッドにダイブして ベッドの上にある照明のボタンをいじったり、音楽を変えたりしてはしゃいだ・・・・フリをした 完璧だと思ってた でも、変だよね? 陸君は気付く、いつもと違う私の違和感に・・・きっと ────────楓さん ──んー? ──────なんかあるでしょ? ──なにー? 聞こえないふりをしたかった ─────俺に言いたいこと ───うん もうすぐ終わる ───────話して。何? もう少しこのままでいたい 一緒に過ごしたい 陸くんの事が私は・・・・・ そんな気持ちを飲み込んで ───陸くん、私、明日アメリカに行く。 だから、今日でさよなら 終わりの言葉でかき消した
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