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｢抱くわけねーだろ。
俺は愛のあるセックスしかしない主義なの！｣
去年の夏も彰さんに言ってみた。そして今も
｢私を抱いてくれませんか？｣って聞いてみた。
ダメだったけど。
彰さんが煙草をふかした
｢お前さ、抱かれた後どうしたいの？｣
｢私、セックスしたら何か変わるかなって。｣
｢何が｣
｢私も相手も｣
｢何が変わるの｣
｢それはわからないけど。その人とどうなりたい
とかじゃないんです。前に進めない現実が
何か変わって前に進めるようになるかなって｣
｢セックスしたら？｣
｢わからないですけど、その期待があるから。
したら何か変わるかなって｣
｢変わんねーよ、そんなものに頼ったって。
セックスは魔法じゃねぇ。愛の無いセックスなんて一瞬の快楽だけ。罪悪感や虚しさしか残らねーよ｣
｢でも、それだけ残れば意味はあるのかなって｣
｢お前・・・クライマーとしては秀才なのに、大事な感情は欠けてるんだな｣
｢私は昔のトラウマから前に進めない女なだけです｣
ただそれだけ
｢・・・どうせダニエルも帰って来ないだろ。
後1時間くらい付き合ってやるから、気の済むまで話せよ｣
彰さんがそう言って私の頭をポンってした。
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