17人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「暖かくなったら行こうね」
返事をしてない間に勝手に話は進んでた。
え?なんだっけ?
会話を巻き戻してみるけど、さっぱり。
愛結を怒らせないように、それとなく訊いた。こういう話の擦り合わせばっかり上手くなっていっている。逆に素直に気持ちを伝えるのには確実に不器用になってる。ヘタレ過ぎて笑える。
「お花見!約束してたでしょ」
ぼんやりと手繰り寄せた記憶のいくつかに、行けなかったデート候補というのがある。
そのことなんだろうなっていうところまでなんとか引っ張り出せた。断片的すぎてホンモノかどうかも怪しいけど…。
「そうだったね」
今の、かなりワザとっぽくなかった?
他人事みたいなのが愛結にふわっと伝わる。
頬を膨らませ怒ってる姿がありありと浮かぶ。
他人事みたい、っていうか、本当に他人事として見てる。桜の木の下に俺が立ってるところも、すぐ傍に愛結がいるところも、それが遠く離れた愛結の住んでる場所ってところも、想像つかない。
…最後に手を繋いだのっていつだっけ?
最初のコメントを投稿しよう!