第一章 菜苗編~軽い気持ちと重い代償

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 いらいらが止まらないから、すぐに家へは帰れない。  一か月くらい毎日帰りが遅かったから、どこかに寄ってから帰っても大丈夫。しかも、今日は金曜の夜。余計に急いで帰る必要はない。  苛立(いらだ)ちを少しでも落ちつかせたくて、私は、目についたカフェに入った。  コーヒーをブラックで頼む。苛立った気持ちには苦いコーヒーが合いそうだ。  「にが!」  でも、味覚に気持ちが取られたから、ほんの少し落ちついた。  まったく、何もできないダメ男だったとは……どうして、住んでもいない私が、掃除、洗濯、料理をしないとならないのよ!  郁さんが黙って出ていった理由を知った私は、今度は彼女にしろちゃんを返そうと思った。  復縁してくれれば、彼は私を放ってくれるだろう。今まで、家事をしていた郁さんが戻るのが一番だと、私は考えた。
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