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アンタたちの望み通りにしてあげるのに、何が不満だっていうのよ。ふざけるのもいい加減にして。
「ミキさん、ごめんなさい。あの、あたし、そんなつもりじゃなくて」
初めて見る、ナナの泣きそうに歪んだ顔。
そうね。アンタにとってカズヤは、恋人にしたいレベルじゃないくらい知ってるわ。
兄妹ごっこも、目の前に観客が居なきゃ意味ないものね。
じゃあどんなつもりだったの? なんてもう訊いてやらない。意地なんかじゃなくて、ホンっとどうでもいいから。
──心の底から、カズヤにもこの女にも興味がなくなってしまった。
「じゃあね。カズヤと二人、お幸せに! ああ、彼氏にはもちろん『お兄ちゃんみたいなものだから、二人の邪魔しないで』って言ってるのよね?」
わたしのあからさまな当て擦りに、ナナは顔色を失くしている。
もしかして、わたしが彼氏に告げ口するかもって心配でもしてるの?
相手を知ってたらそれくらい言ってただろうけど。わたしはもう、アンタに無駄な時間も手間も使いたくないのよ。
だから何もしないわ、安心して。
「物分かりのいい彼氏でよかったじゃない。……そうなんでしょ?」
──偶然、ばったり会いでもしない限りは。生活圏も重なってるみたいだし。ねぇ、ナナちゃん?
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