4200人が本棚に入れています
本棚に追加
.
夕食の途中、麻帆が話してくれた近況。
例の、麻帆をつけていたストーカー専務が、海外に出向になったそうだ。
麻帆は一連の出来事を、念のために上司である事務所の社長に相談した。
事情を知った上司が、クライアントに抗議の連絡を入れたことで全てが露見してしまい、それで処罰が下った……という経緯らしい。
同情の余地すらない、自業自得の結果だろう。
そんな清々しい気分からなのか、お酒のアルコールのせいなのか、すこぶる上機嫌な奈々子。
「奈々子」
「ん?」
「あのさ、この間は……悪かった。お前、別に何も悪いことしていないのに、酷い言い方して」
許してもらおうという甘い期待はなく、ただ謝りたかった。
あの日のこと……。
折角の穏やかな雰囲気を、ぶち壊す覚悟の上で話を続ける。
「俺……寂しかったんだ」
「え……?」
「お前に、隠し事されたみたいでさ」
どうして、あんなにも激昂してしまったのか。
冷静になって、自分の気持ちを見つめ返してみた。
そうしたら、見えてきた答えはひとつだった。
恋愛対象にはなれない分、友達という立ち位置で、誰よりも彼女のこと知っているつもりでいた。
だから、話してくれないことが、寂しかったんだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!