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. 夕食の途中、麻帆が話してくれた近況。 例の、麻帆をつけていたストーカー専務が、海外に出向になったそうだ。 麻帆は一連の出来事を、念のために上司である事務所の社長に相談した。 事情を知った上司が、クライアントに抗議の連絡を入れたことで全てが露見してしまい、それで処罰が下った……という経緯らしい。 同情の余地すらない、自業自得の結果だろう。 そんな清々しい気分からなのか、お酒のアルコールのせいなのか、すこぶる上機嫌な奈々子。 「奈々子」 「ん?」 「あのさ、この間は……悪かった。お前、別に何も悪いことしていないのに、酷い言い方して」 許してもらおうという甘い期待はなく、ただ謝りたかった。 あの日のこと……。 折角の穏やかな雰囲気を、ぶち壊す覚悟の上で話を続ける。 「俺……寂しかったんだ」 「え……?」 「お前に、隠し事されたみたいでさ」 どうして、あんなにも激昂してしまったのか。 冷静になって、自分の気持ちを見つめ返してみた。 そうしたら、見えてきた答えはひとつだった。 恋愛対象にはなれない分、友達という立ち位置で、誰よりも彼女のこと知っているつもりでいた。 だから、話してくれないことが、寂しかったんだ。 .
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