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「……隠すつもりはなかったの。でも、言えなかった」
「どうして?」
「………」
俺の問いかけに、奈々子はそれ以上答えずに、口を堅く閉ざす。
そして、夜空を見上げる横顔が、月明かりでとても切なげに輝いていた。
「奈々子」
「ん?」
「黙ることを選ぶなよ。俺は、どんなことがあっても……お前の味方だから」
強がりなどではなく、心からそう思っている。
俺は彼女が………奈々子が、いつも笑っていてくれたら、それだけでいい。
この想いを諦めきれないなら、そうしようって決めたんだ。
「奏佑……」
「だから、惚気でも愚痴でも、これからは遠慮なく言えよ」
「……ありがと」
彼女が必要としてくれるなら、そんな役回りでも構わない。
自分の感情など二の次だ。
――― 自分がどれだけ辛くても、相手の幸せを願って身を引いてしまうなんてさ。
結局それは、臆病な自分を正当化して、 無理に納得しているだけなんだよな
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