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孝太朗の言葉が、頭をよぎった。
本当、そうだよな……。
それでも俺は、今の関係を失いたくはない。
空いたグラスに、奈々子が追加のワインを注いでくれる。
そして、自分が手にしていたグラスを、コツンと音を立てて軽く当て、小さく乾杯をした。
「奏佑」
「何?」
「ずっと、友達で居ようね」
ずっと、友達……。
それは一見、残酷な言葉のようであっても、俺にとっては彼女の側にいられる最善の手段で、それに縋りつくしかないのだ。
「……ああ、そうだな」
そう言うと、彼女は嬉しそうに、天真爛漫な笑顔を浮かべる。
今はまだ、この関係に甘んじてもいいのかもしれない。
それでもいつか、どうしても伝えるべき時がきたら、自分の気持ちから逃げ出さずに向き合えばいい。
きっと俺は、どんなことが起きたとしても、
この先も変わらずに、奈々子のことが好きだから……。
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