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「もしかして、泊まり込みだったの?」
「まあな」
「コーヒー入れようか?」
「うん、頼むよ」
そう返事をすると、孝太朗は欠伸をしながら大きく背伸びをしている。
シャワーを浴びた後なのか、髪が少し濡れていた。
徹夜明けなら今日は1日中オフなのかな。
雨とはいっても折角の日曜日なのだから、彼女とデートなのかもしれない。
そうでなければ、こんな所でコーヒーなど飲まずに、一刻も早く布団に入って眠り就くに違いない。
そんなことを考えながら、色違いのカップを二つ、棚から出す。
お湯の沸騰を待ちながら漂う気まずい沈黙を、先に破ってくれたのは彼の方。
「……ってか、コーヒー飲めるようになったんだな」
「へ?」
「昔は、ミルクティーしか飲まないって言っていたのに」
「大人になったのよ、私だって」
仕事でクライアントと打ち合わせをするときに、必ずと言っていいほど用意されるのはコーヒー。
苦手なので飲めませんとは言えるはずもなく、少しずつ口にするうちに慣れてきた、といった方が正しい。
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