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第一話
雷が鳴り響き、雨が窓を叩くように降っている。憂鬱な気分で冷えたコーヒーを口に含む。
ーはぁ、、こんな時間まで残業する気なんてなかったのに、、。朝霧の奴、自分で手に負えなくなったからそのまま置いて行ったな、、。
貧乏ゆすりをしながら、パソコンに向かった。
丁度1時間ほど経ったころに携帯のアラームが鳴った。
「はぁ、、。あと2ページ、、。」
肩を回すとゴキゴキと音が鳴る。朝霧の顔を浮かべながら拳を前に構えてストレートを決めた。朝霧はいい後輩だが、たまにこういうことをしてくるクソ野郎だ。
ー今のパンチで許してやろう、、。
フッと笑いながらまた、パソコンに向かった。朝霧が渡してきた58枚に書かれた文章はお粗末そのもので、頭を抱えた。
ー無駄になった紙に謝ってもらいたいもんだ。だが、回した俺にも非はあるかもしれない。朝霧には早かったかぁ、、。
「はぁ、、」
ため息を吐きながら、エンターキーを小指で押した。背もたれに寄りかかると疲労が一気にやってくる。
ー我ながら頑張ったぞ、俺!20枚までにまとめて完璧な内容に仕上げた。明日の会議では1番目立たせて貰おう、、
ニヤリと笑いながら伸びをした。体がピシピシと悲鳴をあげる。コーヒーカップに手を伸ばしたが空だった。もうやることはないから帰れと言われているようだ、、。右側には「早く見て♡」と騒ぐ書類が積まれている。
「仕方ない、、。今日は会社に泊まるか、。」
覚悟を決めて、立ち上がり給湯室に向かった。
可愛らしいヒヨコちゃんの絵が書いてあるコップには"社畜LOVE"とかかれている。朝霧が誕生日にくれたものだった。憎たらしいヒヨコを、何度割ろうと思ったことだろうか、、。
ーブラックな会社にブラックな後輩、、はは、"最高"な環境じゃねーかぁ、。
皮肉な言葉を並べながらコーヒーを注ぎ入れた。
ーこの会社の1番いいところはコーヒーだけは美味いってところだ、、。三連で残業だから助かるわ、、ほんとに、、。
社長の松坂 晴海はコーヒーだけは目がないお婆で現地まで行って買ってくるようなアホだが、俺自身は感謝していた。
「香りがいいな、、。」
芳醇なコーヒーの香りを堪能しながら一口飲んだ。
ー冷えた時も美味いが、淹れたては格別だ。今日の苦労がが目に浮かぶようだ、、。
涙を堪えながらもう一口飲んだ。
コーヒーを堪能しながら席に戻ると自分のデスク以外の電気がついていた。朝霧のデスクでないのが残念だった。
ー朝霧じゃないな、、、。柿崎くんかな?
自分のデスクに向かうと誰かが椅子に座っていた。
「高木先輩!お疲れ様です」
笑顔で迎えてくれたのは柿崎 正馬だった。サラサラッとした黒髪の定時王子と呼ばれている後輩だ。
ー定時王子って、、、呪われているほど語呂悪いな、、はは。
仕事の容量が良く、俺自身彼の働きには助かっている。いつもなら必ず定時で帰る彼がいるから少し驚いていた。
「あぁ、、おつかれさま。残業かい?」
なんだか気まずい雰囲気で聞いてみた。
「違うんですよ、、。忘れ物をしてしまって、、。先輩に渡した書類の間に私物を挟んでしまったみたいで、勝手ながら探させていただいていました。すみません、、。」
なんだか萎縮させてしまったようだった。
ー別に怒っていないんだけどなぁ、、
俺は昔から目つきが悪いらしい笑っても泣いても鬼顔といわれていた。高校の時にラグビー部に入っていたこともあり、がっしりとした体格だ。
「先輩って、一対一で話すと怖いっす、、。」
入社当時の朝霧に言われた覚えがある。その日は帰ってビール3本開けた。
そんなことを思いながら前向くと柿崎がオドオドと見つめてくる。
ゴクンッ
息を呑んだ。
ー小さい背に、整った顔立ち、目の前にいるのが女の子だったらどんなによかっただろうか、、。
「探し物は見つかったか?」
気まずくなり、目を逸らした。
「はい、、すみませんでした。先輩はまだ仕事ですか?」
俺の左手にある淹れたてのコーヒーを見ているようだ。
「まあ、あと2件片付けたら仮眠室で泊まるつもりだ、、。この会社、残業システムだけは完備がいいからな。風呂もあるしな、、。」
そう言うと、何かいいたげに上を向いたがすぐに顔を逸らしてしまった。
ー早く帰れ、、残業鬼ら帰れないんだよ、、定時王子。
頭の中でそんなことを思いながらデスクにカップを置いた。
「、、、自分、手伝いましょうか?家は自転車で10分のところなんで、。」
真剣な眼差しを向けてきたが、頼むわけにはいかない仕事だった。朝霧のクソファイル以外はまともな書類だ、、。部下にやらせるわけにはいかない。
ー性格までイケメンかよ、、チッ、、。
「大丈夫だ、、あと少しだからな。心配しないでお前は帰れ、、。」
ー部下を思いやれる俺、、超いい奴じゃねぇーか、、
柿崎は少し残念そうな顔をしているが、俺は部下の健康を気遣っ手の言葉だったので、悪いとは思わなかった。
「わかりました。先輩無理しないでくださいね、、。」
上目遣いで顔を見てくる彼を、不覚にも可愛いと思ってしまった俺がいた。
ー柿崎が女顔だからだろう、、俺はホモじゃないからな、、。
別に同性愛に偏見があるつもりはない。だが、異性の方が個人的に好きだった。
「あぁ、気をつけて帰れよ、、。おつかれさん。」
声をかけて、椅子に腰掛けた。
「お疲れ様です、、。」
そう言うと柿崎は足早に去っていった。
ーさぁ、もう一仕事するかー
気合いを淹れ直し、書類を持ち上げると一枚の名刺のようなものが下に落ちた。
「なんだ?」
拾い上げると、見覚えのない女性の写真と婚活アプリ"サタデー"という文字が書いてあった。
ーこんなんいつ貰ったっけ?
そんなことを思いながら裏面を見ると、"まだ諦めていない30代40代のあなたに素敵な出会いを、、。"と書かれている。
ー余計なお世話だ、、。運命の出会いを目指して32年、童貞を貫きとうしている俺にこんなもの、、。
ゴミ箱に捨てようかと思ったが、やましい気持ちが芽生えた。
ーもしかすると本当に"卒業"の道が開けるかもしれない、、。
裏面にはアプリのURLが載っている。少し躊躇いながらも、携帯で読み込みインストールまでしてしまった。
「ダメな奴だなぁ、、俺。」
基本情報入力画面に入り、急に恥ずかしくなった。携帯をデスクに置き、名刺を捨てた。
ー今は仕事に集中しよう、、
パソコンの画面に顔を向けた、、。
時間は3時を指していた。最後の一枚を仕上げ、ホチキス片手にコピー室に向かう。お気に入りのホチキスにはABC45の加藤 美咲ちゃんのシールが貼られていた。ホチキスを終え、会議室に配り終えた。
「さぁ、風呂に入るか、、。」
一息ついて三階まで降りた。三階は風呂と仮眠室、そしてマッサージ機があるリラックスルームだ。
ーこんなところに金かけてねぇーで、残業代よこせ、鬼婆めっ!!
社長の顔を浮かべながらシャワー室に入った。タオルも着替えも自動販売機で売っている。洗濯機まであるんだから残業にはいい環境だ。
一通り体を洗い終えると下半身が熱くなった。どんどん膨らむ"そこ"は赤くなっていた。定期的にくる"事"だった。
ー俺自身制欲は強くない、、だから今までも彼女がいなくてもやってこれた。だが、今日はいつもと違う、、。触るだけで爆発しそうだ。家で来ていたらどれだけ良かったことか、、。
左手と右手でゆっくりと掴んだ。掴んだだけで体が少しビクついた。前後に動かすと疼いて堪らなくなる。
「ヴぅッ」
声を殺しながら、段々と速度を上げた。グチャグチャと手元から音を立てながら体を揺らした。そして一瞬、背中から腰にかけて大きく響いた、同時に息が止まる、溢れんばかりの白い粘液が飛び散るった。ドクドクと波打ちながら快感が体を蝕んだ、、。
粘液が排水溝へ流れていくのを見ながらゆっくりと呼吸を整えた。
ー会社でこんなことするとはな、、。
恥ずかしさに溺れながらタオルを巻いた。時間は4時を回っていた。急いで着替え、仮眠室に入り眠りについた。
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