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村人からのいろいろな頼みごとを二人で解決していくうちに、徐々にフェルゼンさんとも打ち解けてきていた。
「ガーネット、村のはずれのお婆さんのところに鹿の肉を届けにいくがどうする?」
「わたしも行きます」
彼に声をかけられ、二人で並んで村はずれまで歩いて行った。
掘っ立て小屋のような家の中に入ると、村はずれのおばあさんが話しかけてくる。
「フェルゼンさんはもう十年近く、村を守ってくれているけれど……この村には、若い女の子がいなくてね。やっと、ガーネットちゃんみたいに気立ての良い女の子と所帯を持ってくれたと、我々村人も一安心してるんだよ」
それを聞いて、わたしの頬は真っ赤に染まった。
「そんな、わたしたちは夫婦では……それに、わたしみたいな女性じゃあ、フェルゼンさんのように素敵な男性は釣り合いがとれません」
(わたしみたいな女が妻だと思われるなんて、フェルゼンさんに申し訳ないわ……)
フェルゼンさんが優しい口調で告げる。
「おばあさん、私のような年をとった人間と、こんな若い女性が夫婦になることはあり得ない」
それを聞いて、わたしは少しだけ悲しくなった。
(わたしったら、何を考えているの……他の男性に処女を捧げてしまった女が、期待してはだめだわ……)
すると――。
「こんなに気の利く女性は、私以外にも引く手あまただ」
「ええ!??」
「おやおや、ガーネットちゃん、これはもう一押しだよ。頑張りなよ!」
おばあさんは、きゃっきゃっと少女のように笑っていた。
「さあ、帰るぞ、ガーネット」
彼が大きな手を、わたしに差し出してきた。その所作はまるで、貴族の殿方のようだった。
(フェルゼンさんは、粗野な印象を受けたかと思えば、時折高貴な仕草をすることもある不思議な男性……)
自然と、彼の手に自分の手を重ねる。
「は、はい!」
そうして、二人で暮らす山小屋に帰る。
(フェルゼンさんの手……優しい……)
わたしの胸のうちに、ぽっと明かりが灯るようだ。
(今思えば、バーン――イグニスさまは言葉こそ優しかったけど、やたらとわたしの身体に触れてきていたし、いざ純潔を奪ったかと思うと姿をしばらく現さなくなった……)
わたしの脳裏に、フェルゼンさんの姿が浮かぶ。
(女性だと思われていないだけかもしれないけれど……フェルゼンさんは、わたしが何もしなくても優しく守ってくれる)
いつの間にか、自分の中でフェルゼンさんの存在が大きくなってしまっていた。
家の近くに帰ってくると――。
近くに金の髪をした貴族然とした青年が立っているのが見えた。
「そうだ。ガーネット、先に小屋に帰っていなさい――」
訪ねてきていた青年と、彼は会話を始めた。
(もっと、彼について知りたい……)
わたしは、分不相応だとは知りながらも、フェルゼンさんに惹かれていたのだった。
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