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「だから君はさ、はっきり言ってちょっとずるいんだよ」
私にそう言うのは同居人のヘアブラシさんです。
「気を使ってるのかもしれないけど、君がウソをついてることには変わりないんだからね。そりゃ彼女のお気に入りになるはずさ」
「最近の都会の住民ときたら、みんなそうやって本心を隠しながら、上辺の関係を取り繕ってばかりなんだから。」
そう言われるたび、私は何も言い返すことができません。
「そんなことない、鏡さんはただ優しいだけなんだよ」
そんな風に私をかばってくれるのは、これまた同居人の燭台さんです。
「人を傷つけないっていうのは大事なことだし」
「梳かしづらい髪にあたるたびに文句ばっかり言ってるヘアブラシさんより、鏡さんのほうがよっぽど良いよ。」
そんな風に言われ、ヘアブラシさんはむっつりと不機嫌に黙ってしまいました。
しかし私は、本当に自分は優しいのだろうかと、以前から自問してきました。
どうして私は、反射的にサービス精神を働かせてしまうのか。
人に真実を突き付けることが、怖いだけなんじゃないのか。
私がネガティブな事実を目の当たりにさせたばかりに、気分を害する人を見るのが嫌なだけじゃないのか……
「ねえブラシさん、きっとあなたの言う通りだと思う」
皆が寝静まった真夜中、私は彼にそっと語りかけました。
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