775人が本棚に入れています
本棚に追加
「食べ足りないよね~」
壱花が言ったその言葉に、喜んだのか、強引に同意させられたのか。
子狸や子狐たちも、うんうん、と頷き、みんなでまた、ラムネを作っていた。
その様子をちょっと微笑ましく眺めていた高尾だったが、
「今度は違う型に入れてみよっかー」
と笑った壱花が途中で消えてしまう。
この世界の夜明けの時間だ。
あーあ、という顔で子狸たちは作りかけのラムネを手にしょんぼりしていた。
高尾が立ち上がり、
「じゃあ、僕らで最後まで作ろうか。
なにか良さそうな型でも持ってきて」
と言うと、みんな、わらわらと探し出した。
あちこちで、がちゃんがちゃんと音がする。
あーあ、倫太郎に散らかすなっ、とか怒られそうだなあ、と思いながら、
「いいの、あったかい?」
とたまに蝋燭が怪談を語りはじめる奥の間を高尾は覗いた。
最初のコメントを投稿しよう!