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「やっぱり起きねえじゃねえか」
「っていうか、この寝相では、枕返し意味ないですよね?」
現実の宿に戻った倫太郎と冨樫は壱花を見て呟き合っていた。
今日はベッドではなく布団だったので、壱花は何処までも転がっていっている。
……すぐに、はだけてしまう浴衣でなくてよかった、と男二人、ホッとしてしまうくらいの無惨な寝姿だ。
哀れに思った倫太郎が立ち上がり、時代劇で、道端に倒れて死んでいる人にムシロをかけてやるのと同じ感じに、壱花に布団をかけてやる。
そんな倫太郎の後ろから冨樫が言ってきた。
「まあ、高尾さんの話だと、枕を返されると死んでしまったりするそうなので。
枕返し、出ない方がいいのかもしれませんね」
「でも、今まで誰も死んでないんだろ?
どのみち、起きてるときには出ないんだろうし。
まだ暗いし、もうちょっと寝るか」
そう倫太郎が言い、二人はもう一度横になって、目を閉じた。
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