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しばらくすると、てってってってって、と駄菓子屋に飛ぶ前に聞いたのと同じ、軽い足音のようなものが聞こえてきた。
倫太郎は、そうっと片目だけ開けてみる。
すると、壱花が銭箱、と呼んでいたあれのフタが開いていて、水干姿のちっちゃな生き物がトコトコ歩いていた。
平安時代の男の子のような格好をしたそれは、放り投げられていた壱花の枕をせっせと返して。
布団と畳の上を引きずり、飛び出して寝ている壱花の頭の下に突っ込もうと頑張りはじめる。
横になって寝ている倫太郎の後ろで、ぼそりと冨樫が言うのが聞こえてきた。
「死を呼ぶ枕返しにしては、ずいぶんと可愛らしいですね」
「……なんか手を貸したくなるな」
私を殺すのに!?
と壱花が聞いていたら、叫んでいたかもしれないが。
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