とりかえっこ

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 ある所に、小さな町がありました。その町には、小さなお城がありました。  お城は華やかでしたが、町はとても貧しい町でした。だけど、貧しいながらも、人々は助け合い、幸せに暮らしていました。  そんな貧しい町に、どの家よりも貧しい暮らしをしている、少女が一人いました。  少女は孤児でした。親の顔も知らず、隣の家のおばさんが、いつも世話をしてくれていました。  少女は毎日、お城を眺めていました。 「あぁ、あのお城の中は、どれ程華やかなのかしら・・・。」  少女はお城に住む事に、憧れていました。  一方で、お城にも一人の少女がいました。少女はお姫様でした。  毎日豪華な食事にドレス。貧しい町とはくらべものにならないくらい、贅沢三昧な毎日でした。  しかし、お姫様はそんな生活に、飽き飽きとしていました。 「町の子供達は自由でいいわ。習い事も無いし、お堅い挨拶も無い・・・。」  お姫様は、密かに町に住んでみる事に、夢を抱いていました。  ある日の事です。お姫様は、思い切って両親に、貧しい町の様子を見てみたいと、頼んでみました。両親は、いい社会勉強になるかもしれないと思い、思いの外あっさりと認めてくれました。お姫様は喜びました。  早速次の日、お姫様は召使と共に、町へと出かけます。お姫様の心は弾んでいました。町へ行ったら、自分と同い年くらいの子と話してみたい。どんな子がいるのか、見てみたい。期待でいっぱいでした。  町へと着いたお姫様は、想像以上の町の貧しさに、驚きました。そして自分がどれ程恵まれていたのか、思わず感謝をしてしまいます。そして、自分はこの貧しさを体験してみないと、将来良い女王様にはなれないと思いました。  お姫様は町を探索しました。歳の近い子供とも、何人か話しましたが、皆貧しい割には、楽しそうに生活をしています。何故だろう?お姫様は不思議に思いました。  お姫様が子供達と話していると、あの貧しい少女がやって来ます。  少女はお姫様が町に来ると聞き、大喜びで待ちわびていました。  少女はお姫様の後ろ姿を見つけると、胸が高鳴りました。  美しく華やかなドレス、周りに従える召使達、絵に描いた様な、理想の姿でした。  少女は勇気を出して、お姫様に話しかけます。 「あの、お姫様。」  するとお姫様は、後ろを振り返りました。少女とお姫様が、初めて出会った瞬間です。  お互いに顔を見合わせた二人は、とっても驚きました。何と、お姫様と少女の顔が、瓜二つだったのです。 「まぁ、私にそっくり。」  お姫様は驚きます。 「私が・・・いる。」  少女も驚きます。  お姫様は驚きと共に、喜びました。とてもいい事を思いついたからです。  お姫様は、少女に近づくと、そっと耳元で話しました。 「あなた、お姫様になってみたくはない?」  お姫様の言葉に、少女は驚きました。夢にまで見た、お姫様になれる?少女は笑顔で、大きく頷きます。  お姫様も又、喜びました。これで町の子供の体験が出来る。 「お花を摘みに行くわ。」  お姫様は召使にそう言うと、少女の手を取りました。 「あなたのお家で借りるわ。」 「分かりました。」  少女とお姫様は、手を繋ぎ、少女の家へと向かいます。  家に着くと、早速お姫様が言いました。 「私は町の生活を体験してみたいの。あなた、私と一週間、交換しない?」 「交換?」 「そう。私があなたになって、あなたが私になるの。」 「私が、お姫様に?」  少女は驚きと共に、喜びました。そして嬉しそうに承諾します。  こうして、少女はお姫様に、お姫様は少女にとなりました。  交換をしてから一週間、少女は、久しぶりに町へとやって来ました。町には、お姫様が待っていました。  少女が優雅な生活を、満喫しました。お姫様は自由な生活を、満喫しました。二人とも満足でした。  お姫様は、少女に言いました。 「さぁ、元に戻りましょう。」  しかし、少女は言います。 「嫌よ。」  と。 「この生活が気に入ったわ。私はずっと、お姫様でいるわ。」  お姫様は驚きました。 「何を言っているの?」 「優雅な生活は素敵だわ。それに両親もいる。私はこのままがいい。」 「そんなのダメよ。両親は私の両親よ。」  お姫様は怒りました。 「わきまえなさい‼」  しかし、少女は不適な笑みを浮かべ、召使に命令をします。 「この者が無礼をするわ。」  召使は、お姫様を囲みました。お姫様は、怒りながら言います。 「無礼をしているのはその者よ‼私が本来のお姫様なのよ‼一週間前に、交換したのよ‼」  お姫様の言葉に、召使達は戸惑います。  どちらを見ても、同じ顔。 「この偽物め‼死刑にしてやる‼」  お姫様は叫びました。すると、少女も叫びます。 「偽物はあなたでしょう‼死刑になるのはそっちよ‼」  どちらが本物のお姫様か、召使達には分かりませんでした。それ程までに、二人はそっくりだったのです。  二人は睨み合いました。  と、少女は、ある事を思いつきます。 「こうするのはどう?お互い首を絞め合って、生き残った方が本物のお姫様。」  少女の提案に、頭に血が昇っていたお姫様は、少女の提案を受け入れました。 「いいわ。」  二人はお互いの首に手を掛けると、同時に力一杯、締め付けます。  少女は自信がありました。日頃力仕事もしていたからです。  お姫様も自信がありました。力を使うお稽古を習っていたからです。  やがて、片方の口から、唾液が垂れ始めます。そして力尽き、死んでしまいました。  ある所に、小さな町がありました。その町には、小さなお城がありました。  お城には可愛らしいお姫様がいます。毎日優雅に過ごしています。  さて、勝負は果たして、どちらが勝ったのでしょうか。お城にいるお姫様は、本物のお姫様?それとも、偽物のお姫様?
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