甘い時間

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「うーん。昨日のから揚げ美味かったしなぁ……でも、ハンバーグも食べてみたいなぁ…」 彼が皮をむきながら悩んでいると、 「じゃ、から揚げはまた今度作ってあげるから、今日はハンバーグにしよっか」 ママが言う。 「うん……」 彼が微笑んで頷いた。 皮をむき終わった彼に玉ねぎを炒めさせて、私はじゃがいもとニンジンを一口大に切り、フライパンに入れて一緒に炒めてもらう。 「尋、そのまま炒めてて……お肉入れるよ」 「うん……」 彼は手際よくフライパンを振って、具材を返しながら炒めている。 「尋……上手いね。料理してたの? 家に小さなフライパンと鍋はあったけど」 「あ、ちょっとだけ。お金がなかった時とか、卵焼いたり、適当にもやしとか炒めて食べてた」 「そっか……」 「香みたいにあんなオムレツは作れないけどな」 「ふふっ、あれは、ママの直伝なの」 「何? オムレツ?」 「うん、香に作ってもらって、すっごい美味しかった」 「あぁ、香、本当にオムレツは練習したもんねぇ」 「うん……でも、あのオムレツで尋が喜んでくれたんだ」 「そう……」 肉の色も変わり焼けると、深い鍋に具材をいれ、水を入れて煮込む。 煮込んでいる間に、ハンバーグのタネを作り、小さなハンバーグの形にして、お皿に並べラップをかけて冷蔵庫へ入れる。 「ただいまー!」 「心だ! お帰り!」「お帰り!」 私が大きな声で言うと、尋も大きな声で言った。 その声に心がリビングのドアを開け、キッチンを覗く。 3人で「お帰り」と言うと、満面の笑みで「ただいま」と返した。 「心って、爽やかイケメンだよな。写真の父さんと似てる」
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