974人が本棚に入れています
本棚に追加
先生がそう話を切り出し、進路の話をし始めた。
まず、尋の成績や学校生活の態度を報告され、パパに少し叱られる。
成績はいい方だけど、希望する大学へは今の成績でB判定ぐらい。
もう少し勉強が必要だけど、目指せる大学ではあると先生は言う。
中学でバスケのインターハイ出場やMVPを取った功績はあるものの、高校では部活等のスポーツでの活動はなく、実績が無い為、スポーツ推薦は不可能。
指定校推薦は出来るが、その場合、試験は12月になり受験勉強にあまり期間がない。
一般の受験ならば、試験は2月で受験勉強は十分出来る。
と言った内容だった。
先生の提案はこうだ。
尋の成績でB判定ほどあれば、今から受験勉強を始め、約2ヶ月でA判定が出るほどにはなるんじゃないかと言う。
指定校推薦で12月に受験をしてみて、もしダメだった場合一般でもう一度受験をしてみてはどうかと。
だけど、その場合受験する費用は2倍。
指定校推薦で合格して一般を受験しなくなっても、申し込みと費用の支払いは先に済んでいる為、費用が無駄になる。
だけど、パパは迷わず言う。
「受験費用なんて気にする事ない。俺は先生が言う通り、指定校推薦で受けてみて、ダメだった時一般で受けるっていうのはいいと思う。指定校推薦で合格すればそれに越したことはないが、一度受けてみたら次の対策が分かるし、一般を受けるまでの期間にまた違った勉強が出来るだろ」
「父さん……」
「そうしよう……なっ」
「うん……」
「じゃ、指定校推薦の推薦状を学校側でご用意致します。少し日数がかかりますが、願書を出す頃には用意出来ますので。出願はまた橘にお知らせします」
「はい。よろしくお願いします」
「橘、受験まで、先生も協力するからいつでも相談に来いよ」
「はい、先生…ありがとう」
「では、これで終わりです。わざわざご足労頂き、ありがとうございました」
「いえ、先生、息子をどうかよろしくお願いします」
「はい、全力で協力させて頂きます」
ガラガラガラと中が騒がしくなり、話し声がしながらドアが開く。
私はずっと涙を流して聞いていたから、慌てて袖で涙を拭いた。
パパ、ママが出て来て、尋が出て来た。
尋が私に声をかける。
「ふっ、お待たせ、終わったよ。帰ろ」
そう言って微笑む尋の目は赤くなり、涙で濡れていた。
椅子を教室の中に戻し、4人で先生に頭を下げて教室をあとにした。
最初のコメントを投稿しよう!