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帰りの車に乗る時、パパが尋を助手席に乗せる。
後部座席にはママと私が乗るが、大きな紙袋が置いてあり、ママが座った後膝に抱えて持つ。
パパが尋に訊く。
「尋、今から尋が育った施設に行きたいんだ。住所わかるか?」
「えっ……うん…」
彼が施設の住所を言い、パパがカーナビに登録する。
「尋、施設に行くけど、大丈夫か? 嫌じゃないか?」
「うん、大丈夫だよ。行くのは久しぶりだけど、嫌とかじゃない。むしろ、久しぶりに行ってみたい」
「そっか、なら良かった」
そう言ってパパが車を出す。
「香も見てみたいんじゃないか? 尋が育った場所」
「うん…見たい」
「ふっ、何か恥ずかしい気もするけど…」
車で20分くらい走った辺りで、低いコンクリートの壁に囲まれた広いグラウンドが見えて来て、奥に横長の建物が見える。
車を近くに停めると、門の横には『神城学園』と書かれた表札。
「父さん、門を開けるから中に車を停めるといいよ」
そう言って彼は車を降り、門を開ける。
ゆっくりと車を動かし、中に入れて車を停めた。
3人は車を降り、ママは紙袋を持って降りる。
尋が中に案内する。
建物に近づき、彼が走ってドアを開けて大きな声で呼ぶ。
「せんせー! 神城せんせー!」
尋に追い着き、中から人が出て来るのを待っていると、年配の女性と男性がゆっくりと出て来た。
「あっ、神城先生! お久しぶりです。橘 尋です!」
「あぁ、尋君…? 大きくなって……ん? そちらは?」
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