進路

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「あっ…」 「初めまして、三浦 翔と申します。妻の那奈と娘の香です。突然すいません」 「あぁ、いえいえ。神城 守(かみしろ まもる)と申します。こっちは妻の多岐(たき)です」 パパとママが頭を下げて挨拶をする。 「どうぞ、皆さんで食べて下さい」 ママが紙袋から大きな箱を差し出して渡す。 「あぁ、わざわざお気遣いありがとうございます。ささ、中へどうぞ」 中へ入って行くと、広い食堂のような部屋を過ぎ、応接室に通される。 奥さんが部屋を出て行き、しばらくするとトレーにお茶を4つとオレンジジュースを2つ乗せ戻って来て、テーブルに置いた。 4人でお茶とジュースを飲み、パパが話を始める。 「突然、お伺いし申し訳ありません」 「あ、いえいえ。お気になさらず」 「ありがとうございます。今日伺ったのは、尋君の事でお話したいと思い伺った次第です」 「話…と、いうのは?」 「私と妻は娘の香を通じて、尋君と出会いました。香は尋君とお付き合いさせて頂いております…」 パパが尋との出会いからこれまでの事を、神城さん夫婦に話して聞かせる。 2人は涙を流し、ハンカチで拭いながら聞いている。 隣に座った尋も私も、そしてパパやママも涙を流していた。 パパが今日、決まった尋の進路の事までを話し、そして言った。 「尋は、私達の家族になりました。今まで借りていた部屋を出て、新たな部屋で信用出来る仲間のもとで、大学受験を目指します。今まで、尋の保証人になって頂きありがとうございました。来月、あの部屋を出ます」 「そうですか……それは喜ばしい事です。私達は尋君に大変、我慢をさせていたと思っています。まだ15歳の彼をこの学園から出し、1人であの部屋に住ませていたのですから。大変な苦労をしたと思います。尋君…ごめんなさいね」 「……いえ…」 「学園にいる時から、尋君が下の子達の事を思って我慢していたのを知っていながら、私達には何かしてあげられる余裕がなくて、本当に申し訳なかった」 彼は黙って首を横に振る。
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