進路

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「ふふっ……俺ね、香に言われたんだ。生まれて来てくれてありがとう。生まれて来たのは価値と意味があるんだ。だから、お腹の中で大切に育てて産んでくれたママに感謝しろって」 彼がそう話すと、パパとママが涙を流した。 「そう……三浦さん……いい娘さんに育てられましたね……素晴らしいです」 「はい……ありがとうございます…」 「尋君、香さんと出会えて本当に良かったですね。幸せになって下さい」 彼が立ち上がって、神城さん夫婦に向かい合う。 「先生! 15年間、育てて下さりありがとうございました。俺はこれから三浦家の一員として生きていきます。本当にお世話になりました」 深く深く頭を下げてお礼を言った。 パパとママも立ち上がり、私も立ち上がって、パパがご夫婦に言う。 「私達からもお礼申し上げます。ありがとうございました。これからは私達が全力で尋を守り、支えて参ります」 「ありがとうございます。私どもの事まで考えて挨拶に来て頂き、本当にありがとうございました。尋をどうかよろしくお願い致します」 「はい……」 話を終え、応接室を出ると、施設の子供達がグラウンドで遊んでいた。 「あ! 尋(にぃ)だぁ!」 「おぉ! 元気そうだな。お前達!」 「ん? もう帰んの?」 「うん、腹減ったしな! また、来るよ!」 「うん、じゃ、また今度あそぼ」 「おう! じゃあな」
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