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食事を済ませ、尋がパパとママに話があると、ダイニングのテーブルに呼ぶ。
鞄から何かを取り出し、パパとママの前に置く。
「少しだけど、貯金と最後のアルバイトの給料が入ってる。もう俺には必要ないから、使って。暗証番号は…」
そう言って、銀行の通帳と判子を渡した。
「……じゃ、これは大事に預かっておくよ。もし何か買いたい物とか必要な物があれば、必ず言ってくれ。心と香も同じだから」
「うん……あ、そういえば……」
リビングのソファーで聞いていた私と心の方を向き、彼が訊く。
「香と心が俺に買ってくれたものって……お金はどこから?」
「あぁ、それはね、心も香も家の手伝いや私の手伝いをしたら、少しだけどお小遣いを渡すの。夕食の手伝いで100円、洗濯で100円って」
ママがお小遣いのシステムを説明する。
「えっ……じゃ、そんなふうに貯めたお金を、俺に使ったの?」
「ん? うん…そうだよ。自由に使えるお小遣いだもん」
「そうだよな。俺が稼いだお小遣いをどう使おうが、お父さんとお母さんには文句が言えないんだっ! ふふっ」
私に続いて、心も言う。
「…………いや、そうじゃなくて……そんな大事なお金……」
「ふっ、2人は尋の為に使いたかったみたいだな」
パパが私達の会話を聞いて言った。
「……ほ、ほんと……っ……もったいない……」
目に涙を溜めて、声を震わせて言う。
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