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一家の長である……いや長であった私は“悪魔”。人間と取り引きを交わし、死後に魂を頂戴するのが私の仕事。
本来、悪魔である私に家族などいない。そのため私は人間の生態を研究するべく擬似的に家族を作った。
鬼は地獄から、怪獣は幻獣界から、天使は天国から、幽霊は黄泉の国から、宇宙人は別の惑星から適当にスカウトし、ロボットは人形に魂を注入し生命を与え、ついでにツチノコは黒魔術で誕生させてみた。
そう。別に比喩で言っていたわけではない。全員、正真正銘の人外だったのだ。ちなみにマイホームも私の魔力で廃屋を新築一戸建てに見せかけていたにすぎない。
ここで数日間、この者たちと暮らしてみて私も少しは人間の心理を知れた気がする。一家の長というのはなかなか苦労するものなのだな。次に取り引きする時は上手く情に訴えてやれそうだ。
「でも悪魔さん。あっしなんかが嫁役で本当によかったんですかい?」
「ああ。一部の既婚男性は嫁を鬼と呼んでいるそうだからな」
「わたくしも少々悪ふざけが過ぎました。真にすみませんでした」
「いや育ち盛りの子供はあれくらいがリアルだ。キミは適役だったよ怪獣君」
「チキューノコトバ、ムズカシカタ」
「私もそう思うよ。宇宙人君」
「…………オワリ?」
「ああ。なかなかの引きこもりぶりだったよ。もう成仏していいよ幽霊君」
「して、めしはまだまだまだまだまだまだまだ」
「もう少し良質な魂を入れるべきだったな」
家族だった者達に別れを告げ、元の独り身の悪魔に戻った私。あとは家として利用していたこの廃屋を出るだけだ。
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