ゾクゾク仮ゾク

4/11
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 家の敷居を跨ぎ、玄関にて靴を脱ぎ始めた時、ドタドタと先程とは違う足音が廊下に響いた。どうやらもう一人のお出迎えが来たようだ。 「ただい」 「おかえりなさいこくらっしゃー!」 「ぐほ!?」  私の鳩尾(みぞおち)にピンと伸ばした指先がめり込んだ。 「おみやげはー? ねーねー! おみやげーっ!」 「いや別に出張に行ってたわけじゃないし何も買ってないよ」 「なーんだケチ。つまんないのーっ」  悪態をつくだけつくと、またバタバタと騒がしく去っていった。  今のは我が家の“怪獣”だ。家中を荒らし回り、ギャーギャーと奇声を発し、イタズラと言う名の被害を与え、休みの日ともなるとどこかへ連れて行けと騒ぎ立てる。ある意味鬼よりも厄介な存在。  おまけにその鬼も怪獣には甘いから実に手に負えない。あのまま成長しないことを願うばかりだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!