ゾクゾク仮ゾク

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 リビングに入ると、偉そうに足を組みソファーにふんぞり返っている家族がいた。 「ただいま」 「あーんむいちろーきゅんかわたんですこすこのすこ。エモいよねーどちゃくそわかりみがふかすぎる」  どうやら電話をしていて私の帰宅に気づいてないようだ。 「ま? ガチでタヒるンゴ? ぴえん。マジ卍つらみざわやばたにえん」  何を言っているのか理解力のある私でも全く理解できない。無理もない。彼女は“宇宙人”だからな。地球住みの私が外宇宙の言語など理解できるはずもない。というか地球に住んでいる以上、地球の言葉を勉強し正しく使ってくれ。  盛りに盛った派手なヘアースタイルを冷ややかに見下していると、背後に気配を感じた。 「…………」 「う!?」  振り向くと、青白い顔をした人物の恨めしそうな目がこちらをじっと見据えていた。 「ああ、いたのか……ただいま」 「…………」 「ああ、邪魔だったか。すまんすまん」  私が道を譲ると、彼は冷蔵庫から炭酸飲料を取ってそのまま自室へと消えた。  今のは我が家の“幽霊”だ。存在感が無く、いつも自室に引きこもっているので滅多に顔を合わさない。しかししばらく見ないうちにまた一段と肥えたな。あんなふくよかな幽霊、うちにしかいないだろう。
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